参加者の反応が大きな自信に。CEDEC登壇で得た、かけがえのない価値

2026年7月22日(水)〜24日(金)に開催された、国内最大級のゲームに関する技術や知識を共有するカンファレンス「CEDEC」。公募による選考を経て選出されるセッションでは、REALITY株式会社の池谷さんが2セッションに登壇しました。
準備段階から登壇後の交流会まで、一連の体験を通じて得られたものや、自身・周囲の変化など、CEDEC登壇がもたらす数々の魅力について聞きました。

池谷:REALITY株式会社/Platform事業本部/Engineering部/Avatar Systemグループ/Technical Artチーム

2022年4月、グリー株式会社(現:グリーホールディングス株式会社)に新卒エンジニアとして入社。REALITY株式会社(以下、REALITY)に配属され、Unityエンジニアとして主にアバター機能の開発やアセット運用を担当。2025年7月のTechnical Artチーム立ち上げに携わり、現在は同チームでテクニカルアーティストとして従事。主にアバター領域において、アセット制作パイプラインの整備からアプリ機能の開発まで幅広く担当している。

【CEDEC2026に採択されたセッション】
課題発見から始めるプロダクト密着型TA組織立ち上げ 〜小規模TAチームが3Dアセットの生産性を倍にした方法〜
属人化を叩き割れ!「制作加速」と「安定化」の矛盾を打破する:8年目プロダクトが辿り着いた「ミスが起こり得ない」アセット制作フローの全貌

▼資料など詳細はこちらの記事をご覧ください。
CEDEC 2026に全7セッションで登壇!参加の醍醐味を登壇者に聞きました

チームで培ってきた知見を発信しよう

ーーCEDECの公募セッションにチャレンジしようと思った一番大きな理由は何ですか?



池谷:私が所属するTechnical Art(以下、TA)チームは、エンジニアの技術的領域とアーティストの表現的領域の間を取り持つ役割を担っています。ちょうどチームの立ち上げから2年経ち、社外の方が見ても面白いと感じてもらえそうな知見も数多くたまっていたことから、マネージャーの声掛けでCEDECに応募することになりました。チームメンバーが1人1案ずつ応募し、結果的にマネージャーと私の共同案が1本、私個人のものが1本、合わせて2本が採択されました。

ーー採択が決まったときの気持ちはいかがでしたか?



池谷:学生の頃からエンタメ系のコンテンツ開発に携わっていたこともあり、CEDECはずっと憧れていた舞台。「チーム全体で1本でも通ればいいな」と思っていたのですが、まさかの2本採択で本当にビックリしました。


CEDEC2日目に登壇する池谷さん。カンファレンスルームが満員近くになるほど盛況でした。

ーー登壇した2本のセッション内容を教えてください。



池谷:1本目はマネージャーと共同で行ったTAチームの立ち上げに関するもので、組織として成果を出し続けるためのチーム作りやチーム間の連携、文化形成にフォーカスしたセッションです。
2本目はもう少し具体的な内容で、長期運用で複雑化した仕様や大量のアセットに対して、効率的かつ安定的に制作するための考え方と技術の両面について発表しました。

ーーセッションを聴講してくださる方に、特にどんな学びを提供したいと考えましたか?



池谷:TAチームの立ち上げに関するセッションでは、REALITYにおけるTAチームの立ち上げ事例を元に、コミュニケーションを円滑にする重要性や、風通しのいいチーム内文化の醸成方法などのノウハウを持ち帰って欲しいと考えました。
また、効率的・安定的な制作についてのセッションでは、テーマがREALITY特有のものではなく、どこの会社でも発生しうる本質的な課題を含むことから、表面上の具体例を見せるだけにとどまらず、その裏にある骨組みの部分をぜひ理解してもらいたいと考えて話しました。

いかに「自社にも当てはまる」と捉えてもらえるかを意識

ーー過去に自社の「GREE Tech Conference」でも登壇のご経験がありますが、そのときと今回のCEDEC登壇とで、得られるものに違いはありましたか。



池谷:「GREE Tech Conference」は、グリーグループに興味を持っている参加者が多いため、ある程度REALITYという会社について知っているという前提で話ができたのですが、CEDECではREALITYという会社を知らないという前提で発表を組み立てなくてはなりません。REALITYならではの複雑なコンテキストを理解していないと深いところまで理解できない部分もあるので、汎用性を持たせながらも噛み砕きすぎない説明にするなど、内容が他人事だと思われないように意識しました。
また、参加者の中に顔見知りもいる「GREE Tech Conference」と違い、CEDECは知らない人ばかり。また、カンファレンス全体の参加者数も「GREE Tech Conference」の300名程度に対してCEDECは数万人レベルと、規模の差もあってとても緊張しました。「目の前にいる大勢の皆さんにきちんと理解してもらえるだろうか」という不安が大きかったですね。

ーー準備期間や準備に要した時間はどのくらいでしたか。特に苦労したことはありましたか。



池谷:準備は1カ月ほどかけて、仕事のスキマ時間を縫うように進めました。特に時間を要したのがスライド制作で、普段は特に意識することなく進めている業務を一度俯瞰し、言語化し、汎用的なパッケージになるように整理しました。個人ではなくチームとして取り組んできた内容のため、時間の経過で記憶があいまいな点や自分が関わっていない部分について、メンバーに確認を取りながら進める必要があり、意外に時間がかかり苦労しました。
スライド完成後は、まずチーム内で確認を行い、発表前には有志の社員にも聴いてもらいながら、本番さながらに60分丸々リハーサルを行いました。このときにもらったさまざまなアドバイスを参考に、共同セッションのほうはスライドの構成を大幅にブラッシュアップしました。

ーーセッション当日の手応えはいかがでしたか。



池谷:かなり手応えを感じました。CEDECは発表後に行われる登壇者同士の交流会も目玉なのですが、誰もが知っているゲーム会社のTAチームの方と話をしたり、他社の方々からもさまざまな質問があったり、内容の濃いフィードバックをいただくことができました。その多くが好意的な評価だったことは、TAとしての自信になりました。
チームの発足からずっと手探りで仕事を進めてきたため、自身の業務に半信半疑な部分も少なからずありました。今回登壇してみて、外部からの評価によって「やはり間違っていなかった」という確信が得られたのは、大きな収穫ですね。
逆に少し後悔しているのが、「Ask the Speaker(※)」の実施を選択しなかったことです。今回はセッションを2本担当するため、登壇後は余裕がなくなっているだろうと思ったのが理由ですが、より深掘りして理解を深めてもらうためにも、次回機会があったときにはぜひ選択しようと思いました。

※Ask the Speaker:公演終了後、専用のエリアにて登壇者と受講者が直接質疑応答を行うこと

TAチームが担う役割の社内認知・理解の拡大効果も

ーー発表を聞いた人から「さまざまな立場から問題点を捉えることができる視座の広さを感じた」との声もあったそうです。その強みはどのようにして身につけられたのでしょうか。



池谷:TAとは、エンジニアとアート、両方の領域をある程度知りつつ、お互いの間にある問題を解決する何でも屋さんのような立場です。「今、どの職種の人たちが、どんな仕事をしていて、どんなことに困っているのか」について、ざっくりとでも把握しておく意識は常に持つようにしています。例えば、自分の仕事に直接は関係していないSlackのチャンネルにも参加し、各チームの進捗現状を俯瞰で捉えるように心がけています。
その際に大切なのが、コミュニケーションです。直接助けを求められていなくても仲間のデスクに行って悩みを聞いたり、飲み会の場でキーパーソンとなる人に話しかけたりすることが、課題解決の糸口になることもあります。また、Slack内ではコメントするほかに雑談チャンネルでなんとなく情報をアップしてみるなど、できるかぎりTAとしてのバリュー提示をするように心がけています。
会社の誰かが悩んでいることを知っていて黙っているのは会社にとって不利益ですし、ひいてはユーザーのためにもなりません。仕事としてやっている以上、僕らはそれぞれがプロのはずなので、公平な目線で何が最適なのかということを常に冷静に考えるべきだというのが持論です。

ーーCEDECへの登壇を通して何が得られましたか?個人として得たもの、会社・チームに還元できるもの、それぞれ教えてください。



池谷:個人としては、社内外へ向けて分かりやすい成果が出せ、それが大きな自信をもたらしてくれたこと。さらに、熱量の高い他社のTAチームの人と白熱した議論ができたことで、「次はこういうことに取り組んでみよう」という原動力につながりました。
会社やチームに還元できるものとしては、自分の心の中だけにあった考えが言語化されてチーム内で共有できたこと。TAチームの活動がきちんと体系化された資料として社内外に広められたことが挙げられます。最近、後輩が同じような取り組みを積極的にやり始めたのを見たので、私の登壇に刺激されたのがきっかけなら、「挑戦してよかった」と感じています。

普段の仕事を見つめ直す機会として活用してほしい

ーーCEDECをはじめ、各カンファレンスへの登壇を検討している方は多いと思います。そのような方へ向けてチャレンジを後押しするようなアドバイスをいただけますか?



池谷:少しでも興味があるのなら、思い切って挑戦すべきです。自分たちの取り組みを棚卸しすることでその価値に気づけるほか、携わっている業務の本質を見つめ直すいい機会にもなります。その結果、自分ができることには胸を張って「できる」と言えるようになりますし、できないことには明確な改善策が打てるようになります。採択されるかどうかは二の次として、まず応募してみること自体に大きな価値があると思っています。
また、登壇せずともまずは聴講することで得られることも沢山あると思います。このセッションの内容は自分たちの会社でも応用できるなという気づきや、この課題に向き合う必要があるな、という問題意識も生まれます。僕自身は2年前初めてCEDECを聴講した時に、さまざまな気づきとともに、いつかは登壇したいという強い憧れを抱きました。
今後は登壇に限らず、より多様な職種の人たちに各カンファレンスへ参加してほしいので、敷居を下げる雰囲気も作っていけるよう取り組んでいきたいですね。