日本の出版DXを後押しする「DEDEN」とは?DADAN社が目指すビジョンに迫る

「テクノロジーの力で、新たな物語との出会いを提供する」をミッションとして2022年7月に設立されたDADAN株式会社(以下、DADAN社※)。マンガアプリ「DADAN」のリリースから始まり、現在は電子書籍の業務効率化クラウドツール「DEDEN」を軸とする事業にまで領域を広げています。今回は代表取締役社長を務める中村さん、クラウドサービス開発部部長の石原さん、事業開発部部長の吉住さんに、あらためて同社の設立経緯から現在注力している事業、未来像などをお聞きしました。

※DADANの表記について:社名とプロダクト名が同じ「DADAN」のため、社名を指す場合はDADAN社、マンガアプリを指す場合は「DADAN」といたします。

中村:DADAN株式会社 代表取締役社長
2011年グリー株式会社(現:グリーホールディングス株式会社)入社。一度転職後、復職しゲーム事業部長、グリーエンターテインメント株式会社設立を経た後、DADAN社設立から携わり、2025年4月に代表取締役社長に就任。

石原:DADAN株式会社 クラウドサービス開発部 部長
2012年グリー株式会社(現:グリーホールディングス株式会社)入社。DADAN社ではマンガアプリ「DADAN」の開発、運用、および「DEDEN」の開発、設計、運用に携り、クラウドサービス開発部 部長として開発チームを統括している。

吉住:DADAN株式会社 事業開発部 部長
2013年グリー株式会社(現:グリーホールディングス株式会社)新卒入社。DADAN社では事業開発部 部長として出版業界におけるアライアンス推進と、「DEDEN」の事業立ち上げを行い、営業から導入支援、カスタマーサクセスまでを統括している。

マンガアプリ「DADAN」に続き、新サービス「DEDEN」を展開

ーーDADAN社はグリーグループのなかでも新しい会社です。設立の背景と、現在の事業内容を教えてください。



中村:DADAN社設立以前から、IP事業の新たな展開についてグループ内でさまざまな議論がなされていました。ちょうど同じ時期、コロナ禍の影響もあってデジタルマンガ市場が急成長しており、さらなる市場規模拡大の可能性も見込めることからDADAN社の設立が決議され、グリーグループはマンガ事業に参入しました。(プレスリリース)その後、2022年12月にDADAN社はマンガアプリ「DADAN」をリリースしましたが、国内外のマンガ作品を取り揃えて読者に提供する中でさまざまな業務上の課題に関する気づきを得て、電子書籍業務の効率化をはかるクラウドツール「DEDEN」を開発し、2024年5月からサービスを開始しています。

ーー石原さんと吉住さんも設立当初からのメンバーだと伺いました。現在どのような役割を担われているのでしょうか?



石原:私は開発部門の部長を務めています。アプリ「DADAN」の開発・運用と、今力をいれているクラウドツール「DEDEN」の開発・設計・運用の全体を見ています。特に「DEDEN」に関しては、吉住さんがヒアリングしてきた出版社さまのニーズを聞きながら、それをシステムの設計に落とし込み、開発チームと連携してプロダクトを作っていく役割を担っています。



吉住:私は事業開発部の部長を務めています。事業開発部は、自社サービスの営業をすることはもちろんですが、「営業」という行為にこだわらず「お客様の課題解決のためにはなんでもやる」という役割だと捉えています。お客さまによって課題はさまざまなので、お客さまからの情報を開発部門の石原さんたちと共有し、その課題解決をサービスとして形にするところも含めて二人三脚でやっています。

出版現場の課題から生まれたDXツール「DEDEN」

ーー「DEDEN」は電子書籍業務の効率化を進めるツールとのことですが、どのようなサービスか教えていただけますか?



中村:①AI BPO、②SaaS、③Solutionの三つから構成されるサービスです。①AI BPOは複数のAIエージェントとBPOを組み合わせたもので、マンガを流通させるときに必要なファイル制作や、翻訳などを行います。工程の一部をAI化することで作業時間を従来の半分ほどに短縮することができ、特に翻訳が好評で需要が伸びています。②SaaSは、電子書籍のファイル制作から納品まで、管理・運用全般を効率化するツールです。ここでは紹介しきれないくらい多数の機能があり、一部の機能からフル機能利用まで、お客さまのニーズによって柔軟に導入することが可能です。③Solutionは、①AI BPOと②SaaSを組み合わせ、各社のニーズに合わせてカスタマイズしたシステムを提供するサービスです。


現在提供しているサービスの構成

ーー事業を進めていく中での気づきから「DEDEN」が誕生したということですが、具体的にどのような気づきがあったのでしょう。



吉住:「DEDEN」の立ち上げ初期は、もともと別の商材を販売するためにがむしゃらに営業を続けていました。しかし、なかなか成果が出ずに悩んでいた頃、数多くの出版社の皆さまと対話を重ねる中で、業界全体に共通する大きな課題があることに気づきました。それは、作品の管理や納品など、日々の現場業務が非常に煩雑でミスが起きやすい環境にあること、流通させるためのコスト負担が大きいことでした。どの出版社さまも日々の現場で同じような苦労を抱えており、「ここを変えない限り、本質的な効率化は実現できない」と強く感じました。
そこで、グリーグループが持つデジタルコンテンツ管理や配信のノウハウを生かし、出版業界の構造課題を解決するためのプロダクトとして「DEDEN」の開発をスタートしました。結果として、出版社・取次・書店を横断して業務をつなぐプラットフォームへと進化し、多くのお客さまの導入につながるコアバリューとなりました。今振り返るとこの経験が、私たちが大切にしている「顧客ファースト」の考え方の原点になっていると思います。

ーー「DEDEN」の開発には、グループ内のエンジニアのサポート受けていると伺いました。



石原:はい。株式会社グリーの開発本部のメンバーに協力してもらい、開発・運営を進めています。当初はマンガサービスの立ち上げを外部委託することも検討しましたが、最終的には自分が最も信頼できるメンバーと内製で進める方が、技術面でもサービスの質の面でも良いと判断しました。



中村:IPエンタメ歴10年以上の優秀なエンジニアをアサインできるのは、グリーグループだからできることですよね。「DEDEN」のUXやUIがただ使いやすいだけでなく、使ってみたくなるのは、ゲームやSNSなどtoCプロダクトを手掛けてきたメンバーがつくっているからこそだと思います。

ーー「DEDEN」のサービスを開始して1年半ほどになりますが、反響はいかがですか。



吉住:業界内で存在が認められてきていると感じます。ニーズがあることは信じていたのですが、初めは「DEDENって何?」という感じもあり、営業活動だけではなく、業界のキーマンと呼ばれる方々にご協力いただいたり、業界団体での講演などにも力を入れることで、最近では認知度もプロダクトの評価も上がってきていると思います。



中村:プロダクト自体がかなりユニークなので、「一緒に組みませんか」というオファーをいただく機会も増えていますよね。これは営業活動の成果であることは間違いないのですが、「ゲームやアニメなどのコンテンツを広く扱っているグリーグループなら大丈夫だろう」というクレジットがあることも感じます。



吉住:確かに、「DADAN」に掲載する作品を集める際にも、「グリーグループの事業なら話を聞いてみよう」という会社もありました。同じくIP事業を担うグリーエンターテインメントの皆さんには出版社のお客さまをご紹介いただくなど、営業的な支援もあり、グループのリソースや信用力は大きな後押しになっています。

チームワークを大切にできる仲間を募集、成長を望む人には最適な環境

ーーさらなる成長のため、人材採用にも力を入れていくそうですが、どのような人材を求めていらっしゃいますか。



中村:DADAN社の事業においては、営業と開発が常に連携してチームアップしていくことが大事だと思っています。さらに、お客さまも加わって一つのサービスをつくり上げるようなシーンもあるので、「一人で何でもできます」という人より、「人と一緒にやることでより高い価値を生み出せる、あるいは生み出したい」という思考を持っている人が向いていると思います。



吉住:事業開発部では共感性や協調性をすごく大事にしています。どうすればお客さまの業務が楽になるか、お話を聞きながらそれを自分事として捉えられないといい提案はできないので、人の気持ちに寄り添える人が合っていると思います。売上を作ることも非常に大事なんですが、「感謝される機会を増やす・ファンを作る」ということが結果として良いビジネスとなり、売上にも繋がっていくのではと考えています。



石原:クラウドサービス開発部としては、広くエンジニアを募集しています。マンガサービスの経験がある方はもちろんですが、特に強化したいのがAI人材です。「DEDEN」では、マンガ翻訳サービスにおいて、既存のLLM※を活用しながら複数のAIモデルを組み合わせた独自のパイプラインを構築しています。AIエージェントの実装やエンジンのチューニングなど、プロダクションレベルでのAI統合の経験を積める環境です。AIを実サービスで活用する経験を積みたい方は、ぜひDEDENへ。

※LLM…Large Language Modelsの略で、大量のテキストデータを学習し、人間のように自然な文章を理解・生成するAIモデルのこと。

ーー最近は“成長できる職場で仕事をしたい”という人が増えていますが、DADAN社はいかがでしょう。



中村:成長の機会しかないと思います。僕らはどんどん仕事を振っていくし(笑)。真面目な話、時代の風が吹いている領域でやれるかどうかが、人の成長にも大きく影響します。風が吹いている領域は、事業サイクルが速いので、成功も失敗もどちらも糧にできる経験量が多くなりやすく、それがそのまま成長に直結します。今は確実にAIという風が吹いていて、さらに、国が日本のコンテンツ産業を基幹産業と位置付けて海外輸出を後押しするという風もあり、ダブルで吹いているのですから、成長を望む人にとって最適の環境だと思います。

売上増に貢献できるプロダクトで海外進出、日本のマンガを世界に!

ーー今後の展望や課題としていることを、それぞれ教えてください。



中村:AIの活用が進む社会において、グリーグループのエンジニアリング力やプロダクトの実装力は、AIをフル活用可能な組織になれるという点でも大きな強みになります。それを追い風として、海外にもどんどん出ていきたいと思っています。現時点では、「DEDEN」は出版社や電子書籍ストアの効率化とコストダウンのためのプロダクトという位置づけですが、総合的に活用していただくことでデータが整理され、数字のひも付けが容易になります。データ分析やマーケティングも効率的にできるようになるので、売上を伸ばすためのプロダクトとして、国内はもちろん海外にも展開していきます。



石原:「DEDEN」は、テクノロジーでお客さまの課題を解決することを根幹としています。業務を楽にする喜びから、さらに一歩進んで、今までにない驚きを届けるサービスを目指していきたいです。例えば、以前はマンガを画像データとして保管するだけでしたが、今ではAI技術によってセリフをテキストデータとして抽出し、検索可能なデータベースとして管理できます。これにより、マンガを素材としたプロモーション活用など、従来にはなかった新しい価値提案が可能になります。「DEDEN」では今後、こういった新しい価値を生み出すプロダクトを開発していきたいと考えています。



吉住:目の前の課題は、カスタマーサクセス組織の構築です。「DEDEN」は、サービスを導入されるお客さまの業務プロセスや課題を理解したうえで導入支援を行う必要があり、今後、導入先が増えていけばメンバーの増員が課題となることは確実です。採用強化はもちろんですが、オペレーションの一定の型をつくるなどして、サポート体制を整えていきます。また、出版業界でも海外展開は大きなトレンドになりつつあり、お客さまからの期待も感じられるので、しっかり価値を提供して、出版業界に貢献していきたいです。



中村:最近結構衝撃的だったのが、今年の夏休みに海外旅行に行って書店に立ち寄ったら、棚の1/5ぐらいを日本のマンガが占めていて、日本のマンガの人気度を実際に体感したことです。でも、そこに翻訳されて並んでいるのはマンガの中でも厳選されたものだけなんですよね。当たり前ですけど日本には面白いマンガが数え切れない程たくさんあるので、僕らの技術と経験を生かして、世界中に届けていきましょう!

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