2025年10月1日、グリーホールディングス株式会社 ゲーム事業本部長に、株式会社WFS(以下、WFS) 代表取締役社長の柳原 陽太さんが就任されました。13年に渡りグリーグループのゲーム事業を牽引してきた前田 悠太さんから託されたバトン。 前田さんから柳原さんへどんな想いが承継され、事業のさらなる成長と革新に向けどんな未来図を描いていくのかーー。柳原さんのこれまでのキャリアや現在考えているビジョン、前田さんから新体制へのエールをお届けします。
※この対談は2025年9月中旬に行われました。

前田 悠太:グリーホールディングス株式会社 取締役 上級執行役員 ゲーム事業本部長(9月30日をもって退任)
2006年に株式会社ジャフコ(現:ジャフコ グループ株式会社)に入社し、主にIT・モバイルセクターのベンチャー投資・育成に従事する。2009年7月、株式会社ポケラボ(現:株式会社WFS)に入社、代表取締役社長に就任。2012年11月、M&Aを経てグリー株式会社(現:グリーホールディングス株式会社)に入社。2013年9月より、当社 取締役を兼務。2021年7月より、ゲーム・アニメ事業(現:ゲーム事業)を統括する。
柳原 陽太:グリーホールディングス株式会社 上級執行役員 ゲーム事業本部長(10月1日付けで就任)
2012年 新卒でグリー株式会社(現:グリーホールディングス株式会社)入社。アナリストとしてデータ分析やマーケティング、経営企画などを経てゲームプランナーとして株式会社WFSの前身であるWright Flyer Studios事業本部に異動。ディレクター、プロデューサー、ゲーム事業部の部長を経験し、2021年10月1日、株式会社WFS 代表取締役社長に就任。同社コンテンツ事業全体を統括。
「バトンタッチのタイミングは今だ」という確信がある
ーー前田さん、これまでの重責お疲れさまでした。今の率直な気持ちをお聞かせください。
前田:今も毎日出社して各ミーティングにも出席しているので、あまり実感はないです。ただ、常に責任ある立場で物事を主体的に動かすのが当たり前だった状態から、陽太(柳原)さんたちを主軸にして自分は黒子になろうという意識はしています。一つ発見だったのは、退任の件をオープンにしてから自分たちの事業をとても客観的に見ることができるようになりました。これまでも努めてそうしてきたつもりですが、難しいことだと改めて思います。
ーー柳原さんは、前田さんの退任とご自身のゲーム事業本部長への就任の話を同時にお聞きになったそうですが、その時の気持ちを伺えますか。
柳原:非常に驚いたのと同時に、「直接ゲームづくりに関わる時間が減っちゃうなぁ」というのが、最初に思ったことです(笑)。現場にいながら責任範囲を広げてきて、開発の解像度が高いという自分の強みを生かした経営スタイルを意識してきたこともあり、そこを失いたくないという気持ちもありました。とはいえ、これまで見守ってきてくださったことへの感謝もありますし、前田さんから託されるなら頑張るしかないという気持ちです。
前田:陽太さんとは、2021年から一緒にゲーム事業をやってきましたが、当時から「自分の後任を任せるのは柳原陽太だ」と思っていました。後継者の育成は当然やらなければいけない大きな仕事として考えてきましたし、陽太さんへ後継者としての期待も伝えてきたつもりです。昨年2024年からゲーム事業の大戦略を再策定し、それに伴う再編と複数のプロジェクトの仕込み等を進める中で、「このフェーズの切り替えが、柳原陽太にバトンタッチするのに最善である」ということを確信して準備してきました。

ゲームの開発と経営、両方を知っていることが最大の強み
ーー柳原さんがグリーグループに入社されてからのキャリアを改めて伺えますか。
柳原:初めはデータ分析系の仕事が中心で、マーケティングにも携わるようになり、株式会社Wright Flyer Studios(現:株式会社WFS)の『消滅都市』のテレビCMなど、プロモーションにも関わっていました。その後、経営企画部でアメリカ拠点の再編成に携わったり、グループの取締役会などに出席させていただいたりするようになったのが2014~2015年で、前田さんとの接点は株式会社ポケラボの取締役会に出席させていただくようになったのが最初だったと思います。その後、Wright Flyer Studiosに移籍し、開発ディレクターを経て部長・本部長を務め、2021年10月にWFSの代表取締役社長に就任しました。
前田:最初に会ったのは、陽太さんが入社2~3年目のころですよね。とにかく理解度が高くて、ものすごく優秀だと思ったことを覚えています。しかも、ただ優秀なだけじゃなくてかなりのオタク気質で、数字で論じるだけではなく、ユーザー視点でも語れるところがすごく印象的でしたね。
柳原:ただのオタクです(笑)。
前田:いや、それは違うよ(笑)。当時の役員が陽太さんに直接指示を出し、陽太さんが報告しているのを見て、この若さでどれほどの信任を得ているんだろうって感心していました。その後、ゲームクリエイターとしてははもちろん、事業責任者、経営者としてもすごく成長が早くて、今後の成長も楽しみです。

ーー柳原さんは、ご自身の強みはどんなところだと思われますか。
柳原:経営に関わる業務を経験したうえで、ゲームの企画から、開発、ファンに届けるところ、データを分析しながら運営するところまで一連の業務すべてに携わり、ゲーム開発・運営に対する高い解像度を身につけることができたと思っています。こうした経験から、物事の判断が必要なときに経営的な視点を持ちつつ、クリエイティブチームの力を引き出すような意思決定ができるという点は強みになると思っています。
前田:今回、陽太さんにバトンタッチしようと決めたのはまさにそこで、開発の現場を知っていて、今も最前線で開発・運営に携わりながら経営をしているという点が決め手になっています。昨年、組織の再編や事業戦略の策定などを完了し、これから新たな開発フェーズに入ろうという時期です。そして、業界のなかでも「WFSにつくってほしい」という期待の声がものすごく大きくなっていると感じます。だから、開発と経営、両方をわかっている陽太さんの強みを最大限に発揮しやすいフェーズだと思っています。
ーー組織づくりやチームづくりではどのようなことを心がけていますか。
柳原:ゲームづくりの過程ではさまざまな壁にぶち当たることもあり、壁を突破していくにはチームワークだけではなく、既存の常識にとらわれない独創的なアイデアが重要です。そういったアイデアを出すクリエイターの才能が十分に発揮できるように、日頃から個人の能力や特性を見つけて生かせる組織づくりというのを意識しています。一つのアイデアで停滞していたチームの歯車がかみ合う瞬間や、一気に加速する瞬間の力強さを実体験として知っているので、そういう瞬間を生み出せるチーム編成を心がけています。

常に挑戦し続けてきた前田さんの「前向きさ」をつないでいく
ーーこれまで重責を担ってきた前田さんですが、グリーグループのゲーム事業において印象に残っていることは何でしょう。
前田:いろいろありますが、一つあげるなら最初に陽太さんと一緒に取り組んだ仕事ですね。2021年にWFSでタッグを組んで最初の仕事が、『転生したらスライムだった件 魔王と竜の建国譚』(配信:株式会社バンダイナムコエンターテインメント)の開発と『ヘブンバーンズレッド』をリリースすることでした。当時は新生WFSの立ち上げのタイミングで、自分たちで決めた方向性に対してグループ内を納得させることがすんなりといかずに苦労したのですが、プロダクトの力を信じて2人でやり切ったことは思い出深いですね。結果的に、どちらも無事にリリースできて多くのユーザーさまに楽しんでいただいて。
柳原:よく覚えています。前田さんは社長に就任したばかりの僕を全面的にバックアップしてくれて、そのおかげで周囲からの信頼を得ることができました。
前田:経営者としての力があることはわかっていたけれど、まだ若かったので心配する人も確かにいましたよね。そこは行動と結果で示していけば大丈夫だと思っていたので、大変でしたがいい思い出です。他に強く残っているのは、みんなで一体となっていくつもの苦境を乗り越えてきたことですかね。全員が同じ方向を向いて頑張る中で光を見出す瞬間っていうのがあって、そういう経験は大きな自信になるし、すごく成長するんですよね。そういう瞬間に何度も立ち会わせてもらえたのは、経営者冥利に尽きます。

ーーそうした一体感を生む土壌があるのがグリーグループのゲーム事業の強みだと思いますが、他に、前田さんがグループの強みだと思われるのはどのようなところでしょう。
前田:今のグリーグループの大きな強みの一つは信用力です。大事なIP作品を預けたいと思ってもらえる信用力の高さ。これは、グリーが得意とするRPGやアートクリエイティブの強さ、堅牢なエンジニアリングとか、マーケティング力とか、ゲームづくりに関わるさまざまな要素はもちろんのこと、法務や審査、経理、広報といったバックオフィスの機能も含めた総合力によって生まれるものです。浮き沈みの激しいゲーム業界において、丁寧かつ堅牢にゲーム事業を長期に渡って続けられるということが、圧倒的な信頼感につながってきています。だからこそ、協業や連携といったチャンスも生まれるんです。
柳原:前田さんが長くやってこられる中で、挑戦の量を減らさなかったんですよね。環境や組織体制が変わっても、あらゆる手段を講じてたくさんのゲームをつくり、ユーザーさまに届け、運営を続けてこられた。それが今日の信頼を生んだのだと思います。
ーーこれまで前田さんの姿勢を見てこられた柳原さんが、引き継いでいきたいと思われるのはどういったところでしょう。
柳原:元気なところです。
前田:そこ!? (笑)
柳原:ちゃんと理由があるんです。ここ一番の踏ん張り時に責任者が最前線で勢いよく旗を振っていたら、「あの人がここまでやるなら、俺たちも」ってなりますよね。そういう空気をつくってきたのが前田さんだと思うんです。おっしゃる通りゲーム事業ってすごく波がありますが、 どんな状況でも常に元気で、前向きで、今日も楽しいぞ!っていう、振る舞いができるようになりたいです。

ファンを増やし、ユーザーさまの期待を超える作品を届け続ける
ーー今後、柳原さんがゲーム事業を率いていくうえで、注力していきたいことや新たに挑戦したいことは何ですか。
柳原:とにかくファンを増やしたい。より多くの人に「グリーグループのゲーム事業が関わっている作品だからプレーしてみたい」とか、「大事なIP作品を預けたい」と思っていただきたいです。前田さんがおっしゃる取り、各方面から我々に対する期待が高まっているので、つくるゲームの本数、種類、提供するプラットフォームも、どんどん増やしていきたいと思います。
ーー前田さんから柳原さんへ、また、ゲームづくりに関わるグリーグループのメンバーへメッセージをお願いします。
前田:陽太さんに対しても、メンバーのみんなに対しても共通して言いたいのが「自信を持って、良いものづくりをしていきましょう」。これだけです。今、これまでで一番良い仕込みができていて、信用力もついて、業界内で良いポジションにつけていることは間違いありません。これは、みんなが今まで努力してきたことの結果なので、自信を持って進んでいってほしいです。
もう一つ、私がこれまでなんとか立っていられたのは、一緒にやってきてくれた皆さんのおかげです。本当に感謝しています。ありがとうございました。同時に、いろいろと無茶ぶりをしたり、振り回したりしたことも多くあり、この点については本当にごめんなさい。
そして、退任しても顧問として残るので、引き続きよろしくお願いします。
ーー最後に柳原さん、今後への意気込みをお願いします。
柳原:プロダクトとユーザーさまにしっかり向き合って、ユーザーさまの期待値を超える、求められている以上の品質のものをつくっていきます。グループの本部長としてやることが増えたり、変えなければいけないこともあるとは思いますが、ファンの方々に喜んでもらえるものを届けること、そこは変えることなく続けていきます。
ーーありがとうございました。

※本記事掲載の情報は、公開日時点のものです。
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