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【特集】グリー×JAXA:VR/ARで挑む宇宙ビジネスとエンターテインメントの進化

2017年より、グリーとJAXAはVR/AR分野において人工衛星などの宇宙関連データを活用した新たな事業創出に向け、宇宙を題材とした体験コンテンツの共同制作に関する連携協力を行ってきました。

全球降水観測計画「GPM」で観測された降水データを架空の街で体験できる「世界一の雨降り体験VR」、VRを活用して月面ならではのスポーツを開発する「月面スポーツVRハッカソン」に続き、よみうりランドでは宇宙を体感できるワークショップ「月面キッズキャンプ」を期間限定で開催中です(2019年5月31日まで)。

今回は、本プロジェクトにおける両社のキーパーソンであるJAXAの神谷氏とグリーの原田に、これまでの取り組みや今後の展開についてお聞きしました。

<b>神谷 岳志</b> 神谷 岳志:宇宙航空研究開発機構(JAXA)J-SPARCプロデューサー
宇宙ステーション補給機「こうのとり」(HTV)の開発エンジニア、地上管制官として従事。その後、NASA研究所に派遣されリサイクルの基礎研究をしながら、シリコンバレーのチャレンジ文化に浸った。異業種の社内外有志チームによる新商品の開発等を経て、現在は、最新技術×宇宙をテーマとして、事業企画を進めている。

<b>原田 考多</b> 原田 考多:グリー株式会社 開発本部 XR事業開発部 部長
2010年グリー入社後、通信キャリアや決済代行会社など大手企業とのアライアンス業務を担当。2012年よりマーチャンダイジング事業を手掛けるグリーエンターテインメントプロダクツの設立に携わる。2016年よりVR事業を担当し、JAXAとの相互連携の覚書を締結後宇宙をテーマとしたVRコンテンツの開発を進めている。

VR×宇宙でどんな面白いことができるか

ーーグリーとJAXAの両社が連携協力に至った経緯を教えてください。

原田 原田:グリーでは、VR/ARをスマートフォンの先にある次世代のデバイスになると位置付けており、以前からその分野でのビジネスに取り組んできました。VR/ARの面白いところは、「できないことをできるようにすること」。物理的に可能なことを実現するよりも、不可能そうなことを可能にするほうがワクワクしますよね。その代表例が「宇宙」であり、宇宙に行ける人が限られているなか、テクノロジーによって宇宙体験を可能にすることは非常に良いテーマだと感じていました。ここにVR/ARを活用してアプローチできないかと考えたのが最初のきっかけです。

神谷 神谷:今、日本の宇宙ビジネスは非常に活発です。ロケットの打ち上げや小型の人工衛星をつくるなど30社ほどのベンチャー企業が参入しており、市場規模は約1.2兆円に上ります。国の方向性としては2030年までに市場規模を倍にするというのが大きな目標になっていて、JAXAは外部企業との連携などを通じて宇宙産業の発展への貢献を図っています。その一環として2018年5月に民間企業などとパートナーシップを組んで新たな事業を共創する研究開発プログラム「J-SPARC」を立ち上げ、複数のプロジェクトを進めています。グリーさんとはそれ以前からVR/AR分野での連携協力を進めていましたが、最初のきっかけは、私が「VRで宇宙ビジネスをやりたい」という話を色んなところでしていたら、人を介してどんどんご縁がつながって原田さんを紹介してもらったんですよね。

原田 原田:僕も神谷さんもVRで何かやりたいという思いがあって、お互いに宇宙というテーマでコラボできないかと考えていたのが一致したという感じでしたね。個人的な見解ですが、二人とも好きなことを見つけたら「楽しそうだからやっちゃえ」というタイプ(笑)。人間性みたいなところもフィットしたし、JAXAが持っているデータを使って何か新しいことをしたいよねと。

神谷 神谷:たとえば私の管制官としての体験や、宇宙飛行士から聞いた生の宇宙体験を、ワクワク感を保ったままリアルに誰かに伝えるってすごく難しいんですよね。もちろん自分が宇宙に行ってみたいという思いもあるし、疑似的にでも遠隔でもなるべくリアルに体験してみたい。そこでVRといった最新技術を取り入れることで、もっとたくさんの人に宇宙の楽しさや面白さを提供できるのではと自分なりにずっと考えていました。初めてお会いした時に僕の妄想をぶつけてみたら、原田さんが結構乗ってくれて(笑)。そこから話が進んでいきましたね。

異なる文化が混ざり合いシナジーを生み出す

ーープロジェクトはどのように進めていったのでしょうか?

神谷 神谷:このプロジェクトにおけるJAXAの大きな狙いとして、宇宙に関する理解を深めたり、将来仕事に就く人材を育てていく「宇宙教育」があります。JAXAの中では、宇宙教育センターという部署が中心に進めている分野です。VR技術が発達している今、宇宙を身近に感じ興味を持ってもらうチャンスは広がっており、グリーさんの強みであるエンターテインメントに関するノウハウを生かして、楽しみながら学べるコンテンツづくりに取り組んできました。スタート当初はまず、JAXAにどんなデータがあって何ができるかを考えるところから始めましたね。社内でもVRに興味がある人に声をかけ、有志的なVRチームを作り、プロジェクトに参加してもらい試作を重ねていきました。

原田 原田:神谷さんの社内調整力の高さは本当にすごいです(笑)。こんな人いませんかって相談すると、すぐに連れてきてくれて仲間にしちゃうんです。

神谷 神谷:社内ではグリーさんの名前を出して「VR×宇宙にチャレンジしたい」という話をすると、すごく前向きな反応が返ってくるんですよ。研究者もエンジニアも興味津々で、一緒に新しいことができることを純粋に楽しんでくれています。新しいことをやる時って、やはり人や組織同士のマッチング、想いが重要なんだと思います。

原田 原田:グリーはものづくりが好きなメンバーばかりなので、自由にアイデアを出して一緒に創意工夫できることは非常にありがたいですし、楽しいプロジェクトだなと感じています。もちろん、楽しいことだけではありませんが…(笑)。

神谷 神谷:そうでしたね(笑)。最初は地球観測データをメインに使おうとしていましたが、ハッカソンをやろうとした時に私たち自身でアイデアがなかなか膨らまず、議論の末に月面のデータを活用しようということで方向転換を図ったんですよね。それが結果として、「月面スポーツVRハッカソン」や「月面キッズキャンプ」につながっていきました。

ーーものづくりしていく中でどのような気付きがありましたか?

神谷 神谷:一緒にやっていくなかで感じたのは、ものづくりに対するアプローチの違いです。JAXAの開発は5年、10年といった長い年月をひとつのスパンとして考えプロジェクトを進めていく「ウォーターフォール型」ですが、グリーさんはその対極の「アジャイル型」。ユーザーの声をフィードバックしながら試作して改良してというサイクルが、数日・数か月という非常に速いスピードで回っていきます。JAXAが取り入れるべき点は多くあると思いますし、私自身にとっても大きな刺激になっています。

原田 原田:共同プロジェクトは、実績が伴ってこないとメンバー間のコミュニケーションが減ったりコミットする時間が減ったりして破綻してしまうことが多々あります。今回のプロジェクトがスタート時点から温度を下げずにハイペースで新しいコンテンツを生み出し続けることができているのは、一人ひとりがそれだけ熱い気持ちを持って参加してくれている証だと思いますし、本当に貴重な体験ができている実感がありますね。厳しいことを言えば、このプロジェクトはすぐにたくさんの利益が出るものではないかもしれません。でも、何より自分たちが面白がってやり続けるんだという思いで続けていかなければ、何も生み出すことはできませんからね。

神谷 神谷:社内外からの大きな期待を感じますし、そうした方々の思いに最大限応えていきたいと思っています。

いち早く成功事例を生み出し、ともに達成感を味わいたい

ーー今回のよみうりランドでの「月面キッズキャンプ」は宇宙のワクワク感を保ったまま誰かに伝えることができるコンテンツということでしょうか。

原田 原田:「月に行く」と聞くと、自分との距離感を感じますよね。でも一方で、宇宙はエンターテインメントにおける鉄板のテーマであり、実はすごく身近なもの。そのことに気付いてもらえるきっかけとなるコンテンツをつくれたらと思いました。

神谷 神谷:今回のコンテンツの一つに「月の満ち欠け(なぜ月は満月になったり三日月になったりするのか)」を学べるVRがありますが、理科の机の上の勉強として触れるだけだと難しいと感じてしまう人はたくさんいます。でも、今回のVRでの体験、体感を通じて、アクティブに学ぶことで、聞く・見るよりもはるかに記憶に残るものになると思います。 そして、将来的に宇宙に関わる人がたくさん出てきたら嬉しいですね。これからVRネイティブ世代が出てくれば、新しい感覚を持った人たち向けのニーズに対して、また新しいコンテンツを生み出すこともできると思います。

ーー「月面キッズキャンプ」を通じて感じた課題はありましたか。

原田 原田:まずは現状の取り組みでの収益化に力を注いでいきたいです。それが「月面キッズキャンプ」だけではなく、事業としてのミッションであり、市場拡大というテーマにおいて宇宙産業から求められていることでもあると思っています。

神谷 神谷:成功事例を出すことは大事なことですよね。さまざまな企業さんと話していて、「宇宙ビジネスって儲かるの?」というシンプルな問いを投げられることがあります。そこで自信を持って紹介できるものをまずは一つ確立したいですね。これまでは研究開発として宇宙データを取りに行くという考え方でしたが、グリーさんとの成功事例が生まれれば、「こんなビジネス・コンテンツをつくりたいからこんなデータを取りにいこう」という新しいアプローチができるかもしれません。それが新しい人工衛星のミッションにつながって、そのデータを使ってまた新しいコンテンツができるかもしれない。そういった良い循環を生み出していきたいですね。

原田 原田:宇宙産業にはまだまだビジネスチャンスがたくさん眠っているので、あらゆる情報や技術に幅広く目をやり、どの分野でどんな新しいことができそうか可能性を探っていきたいですね。

神谷 神谷:私は、グリーの田中社長が以前のVRサミットで仰っていた「沖に出ないと波には乗れない」と言う言葉がすごく好きで、まさに宇宙開発そのものなんです。まずは宇宙に行って、やってみないと分からないことがたくさんあるから。グリーさんとの協業では悩みつつ形にして試して改良して、という苦労もありますが、ビジネス面での課題にも一緒に取り組み、JAXAが持つデータを最大限に活用していけたらと思います。宇宙のミッションもそうですが、開発中は合っているかどうか判らず、実際に宇宙へ飛ばしてトライしてみてやっと結果が分かります。常に選択と判断の連続ですが、最後の最後に一緒にチームとして達成感を味わいたいと思っています。

原田 原田:そうですね。今回のプロジェクトを通じて得られた知見と情報を使って、目の前の取り組みだけでなく、より長い目でビジネスチャンスがどこにあるのかを議論できるパートナーシップを築いていけたらと思っています。社長の田中が「皆がイエスと言うのは大抵大したものじゃない。ほとんどの人がノーというものこそチャンスがある」とよく言っていますが、それくらいの強い気持ちが大事なんだと思います。

神谷 神谷:僕も「ノー」って言われると燃え上がるタイプ(笑)。ものづくりも事業開発も結局は積み重ねですから、一歩ずつ大事に取り組んでいきたいです。

原田 原田:続けることって大事ですよね。VR/ARも宇宙分野も現時点で明確に投資できるくらい先が見えているわけではありません。だからこそトライアンドエラーしながら、どの領域にチャンスがあるのかを模索しながらやっていくしかないわけです。事業性を見極めつつ、常に新しい可能性に目を向けてチャレンジを続けていきたいですね。

「月面キッズキャンプ」概要

イベント名称 月面キッズキャンプ
開催日 2019年3月25日(月)~5月31日(金)
※よみうりランド休園日を除く
開催時間 よみうりランド開園30分後~17:00
※開催時間は変更になる場合があります
開催場所 よみうりランド イベント会場「オーロラスペース」
主催 グリー株式会社 / 株式会社TBSテレビ
協力 株式会社よみうりランド
CAセガジョイポリス株式会社
Tech Kids School
合同会社Yspace
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
対象年齢 制限なし
※一部ワークショップは制限年齢、推奨年齢あり
特設ページ https://ariena-lab.com

以上

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