【Pick Up】社内報冊子「ジーマガ」8号より「外から見たグリー:世界74億人に 素晴らしい音楽と感動を 届け続けていきたい」

幅広いジャンルの音楽で数々のヒット曲を連発してきたユニバーサル ミュージック合同会社。2014年に社長に就任された藤倉尚さんは、ナオト・インティライミや米津玄師など数々の新人アーティストを世に送り出してきました。
ヒットを生み出すために必要なものとは?ゲームと音楽の共通目標とは?
今回は田中と藤倉さんによる対談をお届けします。

経営者として、つくり手としての思い


田中

田中:半年ほど前に共通の知人を交えてランチをご一緒した以来、お会いするのは2度目ですね。


藤倉

藤倉:そうですね。ゲーム業界から音楽業界のことまでざっくばらんに話をさせていただき、とても良い刺激をいただきました。


田中

田中:経営者にはさまざまなタイプがいて、純粋に経営に集中している人もいれば、クリエイティブな活動を主にしている人もいます。藤倉さんはアーティストや音楽など新しいものを生み出すことが本当に好きなんだなというのが第一印象で、経営者として共感できるところが多くあると感じています。


藤倉

藤倉:ありがとうございます。元々はアーティストを発掘して一緒に音楽をつくって、世の中にどんな風に伝えていくかプランニングして宣伝するという仕事を長年続けてきたからだと思います。


田中

田中:レコード会社の社長さんというともっと年上のイメージがありましたが、こんなに若い方がいるんだというのも正直驚きました。


藤倉

藤倉:外資系企業ということもあり、歴代の社長は英語が流暢で洋楽部門の出身者が多かったのですが、私はずっと邦楽を担当していたので社長就任の話が出た時も「いやいや全然準備できてませんから!」という感じでしたけれど(笑)。


田中

田中:それは少し意外ですね(笑)。


藤倉

藤倉:私に社長として期待されていることは何だろうと考えた時、背景にはやはりマーケットの変化があると感じました。海外ではダウンロードやストリーミングなどデジタルへのシフトが顕著ですが、国内では依然としてCDなどのパッケージ商品へのニーズも強く、日本の音楽市場は世界でも類をみない独自の市場が形成されています。これまでの経験を生かし、多くのヒットを生み出して邦楽を盛り上げていくこと、これが社長としての使命だと思って取り組んできました。

ヒットするかどうかは「熱量」で決まる


藤倉

藤倉:一方、日本が世界第2位の巨大な音楽市場であることを踏まえると、これからは国内のヒットにとどまらず、グローバルでのヒットも狙っていく必要があると考えています。


田中

田中:そう考えるようになったきっかけは何でしょうか。


藤倉

藤倉:「英語の曲でなければ世界で成功するのは難しい」と考えられてきましたが、2017年はスペイン語の曲が、2018年は韓国のBTS(防弾少年団)が全米チャート1位を獲得するなど流れが大きく変わってきています。日本のアーティストが世界のトップに立つことも不可能ではないと思いますし、これから実現したい夢の一つでもあります。


田中

田中:藤倉さんはアーティストと契約するにあたり、「東京ドームでライブをしている」「紅白歌合戦で歌っている」「ミリオンセールスを達成する」の3つのうち少なくとも1つの未来を強くイメージできる人物を求めているとお聞きしました。なぜそのような基準を設けるに至ったのでしょうか?


藤倉

藤倉:以前、邦楽レーベルの代表に就いた時、新人の売り込みを多くいただいたこともあり、とにかくたくさんのアーティストと契約して売り出して、ということを1年、2年と続けていったのですが全く結果が出ませんでした。背水の陣となった3年目、「これからは自分たちが『絶対にイケる』と信じたアーティストや音楽だけで勝負しよう」と決め、この3つの基準を全スタッフにも徹底したんです。


田中

田中:それが大きな転換点になったんですね。


藤倉

藤倉:ええ。ちょうどその頃契約したのが、ナオト・インティライミやback numberなど、のちに大ヒットを飛ばしたアーティストたちで、KARAに関しては担当者の熱意に押されて韓国までライブを見に行ったほどです。誰かに言われたからではなく、担当者自身が確信を持ってアーティストや音楽を世に送り出せるということは、とても大事なことなんだと改めて気づかされました。思いきったことをいえば、たとえ会社が潰れかけても自分たちが信じた道を突き進むんだというくらいの熱量があったからこそ成し遂げられたことだと思っています。

「良いものをつくること」と「利益を上げること」の両立


田中

田中:藤倉さんがおっしゃるように、発信する側の「好き」という気持ちが原動力となってヒットにつながることもありますし、社会に受け入れられるところをあえて狙っていくやり方もありますよね。どちらがベターなのか、難しいところです。


藤倉

藤倉:ケースバイケースだと思います。たとえばクラシックやジャズなどのジャンルは、良い音楽を世の中に届けるのはもちろん、音楽遺産を継承するという意味でも継続していくべきですよね。作品によってはアーティストの魅力を最大限に引き出すために、プロデューサーを付けたりアレンジを加えたりしながら、ヒットの確率を高めていくことももちろんあります。


田中

田中:「クオリティ優先なのか、収益優先なのか、どちらか決めてください!」と言われて困ることがあるのですが(笑)、社員から同じ質問をされることはありませんか?


藤倉

藤倉:あるあるですよ(笑)。ずるいけど「両方だよ」と答えています。実際、良いものがつくれてたくさん売れるのが理想的ですが、どんなに素晴らしい作品でも世の中に伝わらないことで歯がゆい思いをすることもありえますからね。


田中

田中:両方を実現させるのは相当高次元なことですよね。そもそも、どちらか一つを成功させるだけでもかなり難易度の高いことだと思います。


藤倉

藤倉:本当にそうですよね。これは持論ですが、ブレイクするアーティストに必要な条件として、歌の才能やカリスマ性など先天的に光るものを持っていることの強みは50%くらいだと思っています。あとの50%をつくるのは「学び」です。本人の才能に磨きをかけるためのインプットや、我々ができる限りのサポートとマネジメントをしていくことがヒット
への道につながっていくと信じています。

事業を通じてすべてのステークホルダーを幸せにしたい


田中

田中:「音楽を愛し、人を愛し、感動を届ける」という社訓は、どのようにして考えられたのですか?


藤倉

藤倉:社長に就任する1年程前に、2つの会社が合併し、新体制が始まりました。そこで何が起きたかというと、小さなことでもあらゆる場面で意見が割れるわけです。しかし我々が本当に力を注ぐべきなのは、一人でも多くの方に素晴らしい音楽を届けることです。幸い、多くの社員には「音楽が好き」という共通点がありますから、これをベースに経営者とし
ての思いを言語化しました。


田中

田中:社員の皆さんに変化はありましたか?


藤倉

藤倉:合併翌年にDREAMS COME TRUEのアルバムをリリースすることになったのですが、両社に在籍していたアーティストだったこともあり制作部門だけでなく全社員の力を合わせ総力戦で挑み、110万枚の売り上げを超える作品になりました。社員一人ひとりが仕事の原点に立ち返ることができた、とても貴重な機会になったと思います。


田中

田中:やはり藤倉さんが心から「音楽を愛し、人を愛し、感動を届ける」ことの大切さを信じているからこそ、社員の皆さんに熱い気持ちが伝わったのだと思います。


藤倉

藤倉:社員集会などで何度も繰り返し伝えていましたからね。少し照れくさいですが、あの頃は必死でした。結果的に、会社が本当の意味で一つになれた実感があります。


田中

田中:最後に、グリー社員へのメッセージをお願いします。


藤倉

藤倉:会社にとって何よりの財産は「人」であり、グリーで働く皆さんの幸せがあるのは、田中さんという素晴らしいリーダーがいるからだと思います。よく「リーダー以上に会社は大きくならない」と言われますが、VTuberサービスなど田中さんは次々と新しいことに挑戦されていて、会社もリーダーも日々成長のための取り組みを進めていらっしゃるとお見受けします。社員の皆さんには、たくさんのチャンスにあふれた多様性のある素晴らしい環境のなかで全力で頑張っていただきたいですね。音楽とゲームは似ていて、「グローバルでヒットを生み出す」という共通の目標があると思っています。世界中の74億人に伝わる良いものを一緒につくっていけたらいいですね。


藤倉尚:1992年ポリドール株式会社に入社。数々のヒットを生み出したレーベルの現場で活躍後、AIや徳永英明のヒットをきっかけに邦楽レーベル「ユニバーサルシグマ」を軌道に乗せ、K-POPやカバーアルバムなど新たなジャンルを確立。ナオト・インティライミ、back number、クリス・ハート、米津玄師など多くの新人アーティストを世に送り出してきた。

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