【Management Voice】#05 荒木 英士「担当役員に聞く!『REALITY』って何が面白いの?」

グリーグループの役員に、事業や個人のことなどをインタビューする本企画。第5回は、REALITY代表取締役社長の荒木英士さんです。

【プロフィール】
グリー株式会社 取締役 上級執行役員 兼 REALITY株式会社 代表取締役社長
荒木 英士

大学時代に複数のスタートアップの創業に参加。事業売却を経て4人目の正社員としてグリー株式会社に入社。モバイル版GREE、ソーシャルゲーム、スマートフォン向けGREE等の立ち上げを主導した後、2011年から北米事業の立ち上げに参画。
2013年に日本に帰国し、グリー株式会社 取締役に就任後2014年にWright Flyer Studiosを立ち上げ(現WFS)代表取締役に就任。2018年にはライブエンターテインメント(現:メタバース)事業を担うWright Flyer Live Entertainment(現:REALITY)を立ち上げ代表取締役に就任(現任)。

REALITYとは
スマートフォン向けバーチャルライブ配信アプリ。簡単な操作で自分だけのオリジナルアバターを作成し、モーションキャプチャ技術を用いたリアルなライブ配信を通じて視聴者とコミュニケーションを取ったり、受け取ったギフトを通じて収益化したりすることができる。また人気VTuberの出演する番組が定期的に配信されるなど、5GやVR/ARの普及を見据えて最先端のインタラクティブエンターテインメントを提案し続けている。

今の自分は「なりたい自分」?

ーー10月1日に「Wright Flyer Live Entertainment」から「REALITY」へ社名が変更されましたが、その経緯をお聞かせください。

荒木:2018年4月に会社が設立され、2年かけて事業が成長し始め、「これからも『REALITY』ブランドでやっていくぞ」と言えるタイミングが来たので、社名もプロダクトもすべてブランドを統一して、認知を一致させていこうというのが大きな狙いです。

ーー「なりたい自分で、生きていく。」をビジョンに掲げていますが、改めてREALITY社が目指すところを教えてください。

荒木:人間には「なりたい自分」というものがあると思うんですが、今「なりたい自分」になれていると胸を張って言える人もいれば、そうでない人もいると思います。

僕が考えているのは、「なりたい自分」って一つではなくいろいろあるんじゃないかということ。家族にとっての自分、同僚にとっての自分、友達や恋人にとっての自分という風にいろんな「なりたい自分」があって、それぞれの姿はちょっとずつ違っていると思います。

今後VRやARが普及していくと、完全没入型の仮想世界の中で自分のアバターを持つことは今SNSを使っているのと同じくらい普通になっていく。そうするといろんな自分を持てるようになるわけで、それは単に性格だけでなく、見た目やふるまいも、まるごと自分を変えることが実現できる時代になってきます。

その時に、もともと自分がなりたかった、けれどなれていなかった自分をつくることができる環境やサービスを提供して、「なりたい自分」になれたと思える人を増やしていくことがREALITYの目指すところです。

ーーREALITYを利用しているユーザーからはどのような声が届いていますか?

荒木:ちょっと長いですが、以下の匿名メッセージがREALITYの価値をまさに表していると思うのでご紹介します。

この他にも、「こういう自分だったらいいのにと思いながらもそうなれていなかった自分が、アバターという新しい見た目や人格を手に入れたことでなりたい自分になることができた」、「周りも認めてくれて、新しい自分になれた気がする」って言ってくれる方がたくさんいます。

すごく素敵なことだと思うし、ビジョンを実現できている手ごたえがあります。一方で、まだせいぜい数十万人の世界でしかないから、数千万人や数億人に同じように思ってもらえるようにしていきたいですね。

社員の成功体験から導き出した3つのバリュー

ーー社名変更と併せて「仕事、ユーザー、同僚を愛する」「事業成長にこだわる」「終わりなき挑戦を楽しむ」という3つのバリューが発表されましたが、バリュー策定の背景を教えてください。

荒木:まず前提として、何十人、何百人の社員で一つのことを成し遂げていくにあたっては一定の価値観や行動規範を持つことはとても大事だと思っています。同じ価値観の人と物事を進めたほうが、コミュニケーションコストが下がるし、新規事業の立ち上げというのはストレスフルでいつうまくいくかが見えないので、価値観が揃っている人たちで一緒に頑張るほうが楽しく長く戦えるんじゃないかと。

そのためには共有すべき価値観であるバリューが明文化されていた方がいいんじゃないかと考えました。

ーーなぜ今このタイミングでつくることになったのでしょうか。

荒木:会社設立から2年間つくっていなかったのは意図的で、バリューを作るプロセス・ストーリーを重視しているからです。

バリューって文章にしてみると結構普通のことなんですよね。どの会社のバリューを見ても似ていて奇抜なものはない。だから会社ができた時、社員が一緒に働いて何かを成し遂げたという経験値がない状態でバリューをつくってもお題目にしかならないというか、共感できないものを押し付けられている感じになるのではと考えました。

なので、一定の成功体験を皆で共有できるようになった時に振り返って「僕たちってこういうやり方でやってきたよね、だからうまくいったよね」と言える状態ができ、成功や成長に結びついている共通の価値観が何かを体験から導き出したほうがずっと納得感があると思っています。

ーー社員の皆さんはバリュー策定にどのように関わったのでしょうか。

荒木:全社員をグループ分けしてワークショップを開催し、この2年間で成功したこととそれを支えた価値観は何だったのかを皆で出し合ってもらい、それを踏まえてマネジメントメンバーで議論して最終的に3つになりました。

結果として「あの時の仕事って、このバリューに書かれているようなことを考えながらやっていたな」というように、社員の皆に自分のこととしてとらえてもらえる言葉に仕上がったと思います。

この半年間でユーザー数も増加し、ちょうど皆の中に手ごたえや成功の実感が生まれ始めたタイミングで、これまで言語化されていなかったけれど共通して持っていたカルチャーとか、良いなと思えるポイントを抽出して形にできたと思います。

REALITYは誰かの人生の“リアル”に立ち会える

ーーこの半年間で事業が急成長した要因を教えてください。

荒木:大きく2つあって、1つは2年間コツコツ積み上げてきたプロダクト面の機能追加や改善によって一定の品質に達することができたこと。

もう1つ大きなきっかけとなっている外部要因として、コロナ(ウイルス感染症拡大)で外出自粛になったので、オンラインで誰かとつながりたい、コミュニケーションをとりたいというニーズが高まったことです。

ーー荒木さんが感じるREALITYの面白さとは?

荒木:アバターを通じて誰かとつながったりコミュニケーションをとったりすることで、新しい自分を発見したり、今までしゃべるのが得意じゃなかったけれど配信を続けていたらしゃべれるようになった人がいたり。最近では、配信を通じて知り合って意気投合して、お互いの人柄を理解したうえで実際に会って結婚したという人もいます。

REALITYを使っていると「今なりたい自分になれているんだな」というのを強く感じられる瞬間があるんですよね。自分もそうだし、ユーザーさんを見ていても、その人の人生の中で新しい瞬間が生まれているのをリアルタイムに見て聞いて感じられるというのはすごく面白いところですね。

ーーアバターで活動する醍醐味とは?

荒木:「人は見た目が9割」というのはある種すごく正しいなと思っていて、人は結局、他者からどう認識されるかで自分がつくられるんだと思います。

僕も自分のアバターに対して「かわいいかわいい」って言われ続けると自分がすごく認められた気分になるし、もっとかわいくしたいと思うし、他の人に対しても優しくなれます。なぜなら自分美少女だからね。

見た目が変わることによって人から自分がどう見られるかが変わって、その見た目に合うように自分自身も変わっていこうとするんですね。かわいい自分、かっこいい自分、なりたい自分になれるとポジティブなコミュニケーションが増え、相対的には現実世界よりも自己肯定感が高い人が増えて、そうすると他者にも優しくなれるから究極的には世界平和に近づいていくんじゃないかなって思います。

ライブエンタメはグリーグループの強みが生きる事業

ーーREALITY社の今後のビジョンをお聞かせください。

荒木:グローバル展開を進めます。

デジタル空間上でアバターをつくり、なりたい自分になって他人とコミュニケーションをとるという文化は多くの層に受け入れられるものだと考えているので、自分たちがつくり出してきたサービスを世界中に展開していきたいですね。

過去に北米事業を立ち上げたりWFSのタイトルを海外で成功させたりした経験があり、日本でつくったプロダクトを海外へ広げていく際、何を変えて何を変えないのか、どういうやり方でやれば良いのかなどノウハウが溜まってきているので、これらを生かして全世界で使ってもらえるサービスに育てていきたいと考えています。

あとはプロダクトの充実度をさらに上げていきたいですね。REALITYの中でできることを増やしたり、ここならではの楽しみ方ができたりなど、実現できるよう開発を進めています。

ーーライブエンターテインメント(現:メタバース)事業について田中さんとはどんな話をしていますか?

荒木:「アバターのこういうイベントをやってみたら?」「REALITYにこういうゲームつくってみたらいいんじゃない?」などやたら細かい話のチャットが早朝とか深夜とかに飛んできますね。田中はそういうの大好きなんですよ(笑)。

あとは、5年、10年かけてどういう状態になっていたいか、そのためにはこういう経営基盤や組織文化が必要だよね、など長期的に競争力を高めるためにどういう経営アクションをとるべきかみたいな話もしています。

ーーグリーグループとして、ライブエンターテインメント(現:メタバース)事業をやる意義とは?

荒木:アバターを使ってリアルタイムのコミュニケーションをとったり自己表現をしたりというのは、これからの時代で非常に一般的になっていくと思います。一方で、これを何億人もの人たちに楽しんでもらうにはSNSの開発運営能力、3Dアバターを動かすゲーム的な技術、世界に拡げるためのマーケティング能力などが欠かせません。

つまりライブエンターテインメントとは総合力が求められる事業なのです。この事業を本当に大きく育てていくには多岐にわたる専門的な能力や経験を持つ人がたくさん必要だし、それを支えるお金も必要です。

グリーグループにはゲーム、広告メディア、ライブエンターテインメントという3つの主要事業領域において高い能力を持った人材やノウハウの蓄積があり、資本力もあるので、REALITYはグリーグループが持っているものが最大限に活きる事業なんじゃないかと思っています。

ーー今後の事業成長に期待がかかります。

荒木:REALITYはプラットフォームなので、つくることが大変かつお金がかかるというハードルがある一方で、うまくいった時には企業価値がぐんと上がる可能性があるビジネスだと考えています。

将来的に、ライブエンターテインメント(現:メタバース)事業がグリーグループの企業価値の大きな割合を担っていることを目指しているし、期待されていることも強く感じます。

REALITYにはネットスタートアップから来た人、映像業界や広告業界から来た人、ゲームクリエイターもいて、異業種から集まってきて一つの価値観のもとでケミストリーを生みながら新しいことをできる基盤がある。
自分たちの強みを生かしながら更なる成長を目指していきます。

ーー荒木さん、本日はありがとうございました!